魚事情

ロンドン】魚屋さんに取材してみた!イギリスでは魚を食べない?【前編】

こんにちは。

先日、海洋大3年生の2人で、イギリスのロンドンで働く日本人女性の@プリヒル姉さんさんにオンライン取材をしました。

イギリスの魚屋さん??イギリスの魚事情が気になる!

イギリスの魚事情について根掘り葉掘り聞いちゃいました!

日本とかなり違いましたね

それでは、スタート!

Q.イギリスは日本と同じ島国ですが、イギリスの人はあまり魚を食べないんでしょうか?

そうですね、やはり魚よりお肉のほうを食べることが多いですね。魚をあまり食べないです。

理由としては、イギリス人は魚をどう調理すればいいのか分からないというのがあります。 痛みの早い魚の独特な匂いを嫌う人もいて、あまり魚が普及していないのではないかなと思います。

あとは、イギリスでは階級社会がまだ残っていて、昔は「魚介類というのはお肉を買うことのできない労働者階級クラスの方々が食べるもの」という 思想があり、その名残で魚を積極的に食べることが少なくなったのも理由としてあるかと思います。

ただ、以前に比べると魚を食べる人も増えたと思います。

階級の意識が関係していたのか

Q.イギリスでは、魚は切り身として売っていることが多いですか?それとも一尾丸ごと売っているのが多いですか?

イギリスでは、日本と比べると、スーパーの魚コーナーがすごく小さいんですね。大体、お肉コーナーの三分の一くらいなんです。

日本のスーパーの魚コーナー。見慣れているが、確かに豊富な品揃え。

で、売られているのは今でこそ(スーパーでは)4、5種類くらい、そのうち丸のお魚はほぼ2種類くらい。 あとは切り身で...タラの切り身とかサーモンの切り身とかが売られています。お客さんが切り身の魚を「これ何(の魚)ですか?」と聞く光景もよく見ます。

魚をまるまる売っているのは、私が働くような(スーパーではなく)魚屋さんです。 サーモンとかタラとかの大型のお魚は丸ごと売られている場合が多いですね。 タラが丸の状態で売られている時、お客さんから何の魚か聞かれて、「タラですよ」と答えると、驚かれる方も多いです。

Q.フィッシュアンドチップスに使われている白身の魚には、タラの他にも何か使われていますか?

イギリスといえば、fish-and-chips!

他には、ハドック(Haddock)、日本でいうモンツキダラっていうお魚がいます。

「ハドック」:ヨーロッパお魚ハンドブック(ユカ・ベルトンさん)より抜粋

日本にも存在するんだろうけど、スーパーとかには並ぶようなお魚ではないんじゃないかなと思います。

そうですね、あんま見たこともないですね。

(私も)日本では見たことないので、よっぽど産地とかに行かないと食べれないのかなと思います。

あとは、ポロック(pollock)っていって、日本でいうとスケトウダラに一番近い魚なんですけど、それはイギリスでは生では並ばないですが、 フィッシュアンドチップスの専門店に行くと、「タラにしますか?ハドックにしますか?ポロックにしますか?」とか言われて選ぶことができます。

「ポロック」:ヨーロッパお魚ハンドブック(ユカ・ベルトンさん)より抜粋

少しレストラン系のフィッシュアンドチップスのお店に行くと、プレイス(日本でいるツノガレイの仲間)というカレイとかエイヒレがあったりしますね。

「プレイス」:ヨーロッパお魚ハンドブック(ユカ・ベルトンさん)より抜粋まあでも、ほとんどのところがタラかハドックなんじゃないかな。

イギリスの人ってフィッシュアンドチップスに使われている魚が何か分かっているんでしょうか。

多分タラ(が使われているということ)はわかっていると思います。

ただ、お店でタラ以外の魚(ハドック、ポロック)が並んでいても、ピンと来ていないと思います。 味の違いっていうのも、揚げちゃったらほぼ分からないレベルなので、何の魚が使われているのかお客さんも気づかないし、そこまでこだわっていないと思います。

味の違いはほぼ分からない?

ほぼ不可能です。

私も分かんないじゃないかな。触感が若干、タラの方が身が大きくホロホロ裂けるかなという感じです。 もし、一緒に並べられて食べ比べをしたら分かるかな?という感じで、でも何も言われなければ多分分からないですね。 味のついている衣もついているし、分からないと思います。

値段はほぼ同じ?

ほぼ同じだと思います。値段を変えることはないんじゃないかな。

フィッシュアンドチップス以外のタラのおすすめの料理はありますか?

イギリスってオーブン料理が主流なんですね。 必ず一家に一台大きなオーブンがあって、ハーブもよく使われるので、それで焼くのがよくあります。

Q.少し調べみて、「ウナギのゼリー寄せ」というのがイギリスにあると知ったのですが、食べたことはありますか?

もう食感と質感自体が絶対無理なので、食べたことはないんですけど、

(笑)

(使っているウナギは、)日本であるような細いウナギじゃなくて、ヨーロッパウナギという割と太いウナギを使っているんですね。 ゼリー自体は酸味のある味で、ウナギは焼いているわけではないので皮が香ばしくないんですね。

その時点で無理だし、ちょっとだけかじったことがあるんですけど、柔らかいんだけども、皮自体が香ばしくないので...あと酢漬けになっているので 身は骨からホロッとはとれるんですけど、焼いているわけではないのでフワフワ感はないですね。

...何に例えればいいんだろう。

煮魚を翌日まで持ち越した時の触感?コラーゲンで身が固まった感じ?よりも硬い感じかな。

ふふふ...(笑)

あとは淡水魚独特の泥臭い味かな。好きな人は好きですけど、私はちょっとダメかな。

日本人でも好きな人は好きなんですか?

わかれるかな。

ちょっとゲテモノ扱いなので、イギリスでも絶対無理っていう人もいるし。

あれ(ウナギのゼリー寄せ)ってどちらかといえば、もともと労働者階級の人の食べ物なんですね。 だから、イギリス人全体に受け入れられているかというと、そうではないです。 日本人でも、そういう(悪い)先入観を持っている人でも「あれ、けっこう食べれる」という人もいれば、「お醤油をかけたらおいしいかも」という人もいるし、 「やっぱり食べれない」っていう人もいますね。

3割の人が意外に食べれて、7割は食べれない感じですね。

ゲテ物扱いされているとのことですが、ウナギを使っているので値段は高いんですか?

労働者階級の人たちが食べていた昔は安かったものだったんですけど、ウナギもだんだんとイギリスでは取れなくなって、 輸入物に頼るようになってきたので、原料が高騰して、だから 高級品ではないですけど、安いというわけでもなくなっていますね今は。

日本では、中国産の養殖ウナギが出回っていますが、イギリスではどうですか?

基本来ているのはオランダのウナギですね。

今はもうイギリスはEU加盟国ではないですが、 (イギリスがEUの一員だった頃、)EUは輸入に対してすごく厳しい規則を持っていて、日本とEU間の輸入協定も厳しいので、 「どこで取れたのか」とか「どこで加工したのか」とか書類をいっぱい出してやっと輸入できるっていう感じなんですね。 なので、中国産の海産物、例えば生の魚とかは(ロンドンでは)見たことないです。

かば焼きのような既製品は来ていますが。

ウナギに限らず、中国の海産物はない感じですか?

そうですね。

まあ、そこまで頼らなくても、もっと近場のヨーロッパ諸国で買えるので。 でもロンドンで使われているハマチはほぼ日本から来ていますよ。

ハマチはイギリス周辺では獲れない?

はい、獲れないです。

ハマチは暖かい海のお魚なので、もし取れたとしてらインド洋とかなんですけど、 そうだとしても、それをお刺身の鮮度でイギリスに持ってくるのがほぼ不可能です。

日本っていうのは、とりあえず新鮮だったらお刺身で食べたいっていう人が多いと思うんですけど、 生食を文化にしていない(イギリスの)人は、できるだけ鮮度良く運ぼうという概念がないんですね、当然のことながら。

ときどき、ハマチとよく似たヒラマサという魚が来るんですけど、こっちに届いたときは 焼いても食べれるかという状況だったり、きれいだったとしてもお刺身ではとてもじゃないけど食べれる状況ではないという状況ですね。

100匹獲れましたといっても、ある程度魚が貯まってからまとめてイギリスに送ると思うので、どうしても鮮度が落ちてしまうんですよね。

日本のハマチっていうのは、日本の養殖場で、海外の輸出用に三枚おろしにされた状態で特殊な真空パックに入れられて、 こちら(イギリス)側に受け入れ先、取引先があって、注文が入るとすぐに送るというラインができているので、(ハマチは)すごくきれいな状態で届きます。

つまり2日ほどあれば、養殖場からイギリスに届くような便が整っているんですね。 だから(インド洋周辺国に関しては、)そういうルートになっていないので、アフリカでとれたハマチとかがきれいな状況で届くっていうのは不可能なんですね。

ブログで、(ハマチ以外の)マグロなど他のお刺身も拝見したのですが、他の魚はどのような流通方法なんですか?

基本的にヨーロッパはキハダマグロが主流なのですが...

うちは2種類(仕入れ先が)あるんですけど、

1つは、日本の会社がフィリピンのミンダナオ島でとれたマグロをそこの工場で取れたものをサクにして、 急速冷凍してからパック詰めして、それをイギリスの取引先に送るっているのがあります。

もう1つは、スリランカとか(インド洋周辺)でとれたマグロを冷凍してパック詰めして輸出しているものもあります。

産地の人は、綺麗なマグロが獲れることを知っていて、良い状態で送ればお金になるっているのを 分かっているので、まあそれはもうビジネスの1つですね。

(フィリピンのとスリランカ、)このどちらか(のマグロ)を使っていますね。 1匹(マグロが)取れてすぐにイギリスに送っていくってことをほとんどしないので、冷凍のものを解凍して使っています。

あと、スズキはフランスで養殖されたものを使っています。 フランスとイギリス間っていうのは近いので、生で入った状態のものを使っています。

ホタテは、今使っているのは日本産のお刺身用の冷凍ホタテですね。 イクラは塩イクラ、これは産地がアメリカのものを使っています。

やはり、これらの魚はイギリス近海では獲れないんですね

マグロは基本的に暖かい海のお魚なので、イギリス産っていうのはないです。 クロマグロはスペインで畜養されているので、それが流通していることがあります。

あまりイギリスでは養殖していないのですか?

ギリシャとトルコは、スズキとタイを養殖していたりと、近場が一大産地となっているので、あえてイギリスでしなくても そこから買えるからしていないんじゃないんですかね。

エビを日本であえて養殖しないようなものなんじゃないかと思います。

Q.アンコウの肝とか尻尾が魚屋さんで売られているとの記載がありましたが、アンコウの身は食べないんですか?

イギリスでは、ちゃんと身がついたしか食べないので、(食べる部分の少ない)アンコウの身はあまり食べないです。 そもそもアンコウを吊り上げた状態の時に、漁師さんがしっぽだけの状態にしちゃうんですね。 丸ごと流通させても売れないっていうのが、分かっているんです。

たまーにお店に丸ごと入って来るんですが、まあ売れないですね...

アンコウってアンコウの七つ道具とか言って過食部分が多い気がしますけど、イギリスではそうではないんですかね。

※アンコウの七つ道具:アンコウは内臓を含め可食部分が多く、日本では捨てるところがない魚と呼ばれます。

入ってくるのは頬肉くらいかな。 そもそも内臓を食べるっていう文化がイギリスにはないんですね、魚自体をそんなに食べない文化なので。

頬肉は骨もなく食べれる部分は多いですけど、それでもよく知っている人が買うけども、すごく売れるっていうわけではないです。

その尾の部分を食べるときは、唐揚げみたいな感じで食べるんですか(...ゴクリ)?

うちのお店では、タイ風のカレーの具にすることがよくあります。

「アンコウのパンチェッタ巻き」っていう、うすい生ハムみたいなものに一口大に切ったアンコウを巻いてローストをしたりとか、 そういうオーブン料理にしたりが多いかな。

あとは、フィッシュスープっていう、ブイヤベースのような魚介スープ系に入れるっていうのも多いかな。

この三つが多いです。

全て試してみたい..!

漁師さんはもう食べない部分は捨ててしまうということですか?

そうだと思います。

それか、うちにも来るんですけど、魚のアラだけを持って帰ってくれる業者っていうのがあって、 お化粧品の原料にしたり、肥料にしたりとかするみたいですけど、もしかしたら漁港の人もそういう業者に渡しているのかもしれないです。

ただ、聞いた話なので確証はないです。

でも、食べたり売ったりはしないですね。

ちょっともったいないですね。

前編はここまで!

インタビュー後半は次の記事で!近日公開予定です。

お楽しみに!

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