水産養殖

【遠隔で給餌!?】養殖の最先端を行くウミトロンさんに取材してみた【前編】

こんにちは!

先日、海洋大3年生の3人で、テクノロジーで水産養殖に挑む会社ウミトロンさんにオンライン取材をしました。

快くご許可いただき、ありがとうございます!

えっ、テクノロジーで養殖?

そう、ウミトロンさんは、遠隔で魚に餌をやる「UMITRON CELL」や、魚の食欲を判断する「UMITRON FAI」、 魚のサイズを自動測定する「UMITRON LENS」...などテクノロジーで水産養殖の効率化を実現する会社なんです!

「ウミトロン」公式ホームページ

かっこいい...でも、そんなにテクノロジーって養殖に必要なの?

【⇒結論:必要になってきます】

以下は、世界人口を予測したグラフ。

かなり伸びていますね

2020年の世界人口は、77億9500万人。そして、30年後の2050年の世界人口は97億人と予測されています。

30年で20億人も増えるのか

この爆発的な人口増加により、深刻なタンパク質不足の可能性が懸念されています。 しかし、タンパク質の供給源である牛、豚、鶏を育てるにも、陸上の面積や収穫量には限界があります。

一方で、海洋養殖においては、まだ有効活用されているとは言えず、まだまだポテンシャルがある分野と言えます。 ウミトロンさんによると、「沿岸域だけで現在の100倍以上」を生産できる可能性を秘めているんだそう!

つまり、そんな海面養殖業のポテンシャルを最大化できるのは、AIを始めとするテクノロジーなのです。

そんな最先端なウミトロンさんに色々聞きました。

海洋大生

それでは、レッツぎょー!

Q.ウミトロンさんには、遠隔給餌機などの色々な製品がありますよね。 これらのどの製作段階で養殖業者の方に声をかけたんでしょうか?

まず、ウミトロンのメンバーが7割がエンジニアだったし、養殖をやったことなかったんです。 バックグランド的に養殖との関わりがなかったので、当時の私たちより海洋大の皆さんのほうが知識があるかもしれないですね。

ですので、まずはサービスを作る前段階から現場に足を運んで、養殖業者さんを回りました。 現場に行って、養殖の課題を聞いて、ではそれはどういう技術で解決ができそうなのかという感じで何か月もかけてヒアリングを行いました。 つまり、課題探しという開発前段階から声をかけていましたね。

ヒアリングを経て、「こういうプロダクトがあれば、業者さんに貢献ができるのではないか」というアイディエーションの段階からということです。

では実際に制作する前から、製品を買う業者さんはもう既にいたということなのでしょうか?

製品開発に関して、製品のアイディアを練っていく段階、簡単な機能だけをもつ試作品を作る段階、 それを実際に業者さんに見てもらってフィードバックをもらう段階というのがあります。

現場で実際に製品を使ってもらうと、「ここが便利だ」とか「この機能が欲しい」といったポイントが見えてくるので、 これらのフィードバックを踏まえて、製品のブラッシュアップをしていました。

現地のフィードバックをもとにして作った製品を生産者さんに置いてもらって、 使ってもらいながら、、徐々に生産者さんや漁協、養殖関係者とのネットワークも少しずつ広がっていきました。

現場に足を運ばないと、実際の課題が見えてこない⇒現場を回ることで、ネットワークも広がっていく。

Q.色々と養殖の規模があると思います。例えば、沖合の大型生簀(いけす)や湾の中の小規模の生簀などがありますよね。 ウミトロンの遠隔給餌機「UMITRON CELL」の利用に適している環境、または適していない環境などはあるのでしょうか?

まず、「UMITRON CELL」は、陸上ではなく海の養殖事業者さんを対象にしています。 UMITRON CELLのような給餌機を使える魚は主に真鯛、シマアジ、サーモンなどなのですが、どんなの魚にも使えるかというと、そうではないんですね。

例えば、マグロ養殖の場合、生産者の方が船からバズーカ砲みたいなので生のイワシを生簀の中に放り込むんですけど、 これにはUMITRON CELLは使えないです。

ただ、ペレット状の餌のタイプの魚には使えるので、 日本の養殖生産量が多い真鯛の養殖には使っていただいていますね。 生餌(なまえさ)やモイストペレットという半生のタイプじゃないので使えます。

鯛めし、超美味しい...もちろん刺身も。

汽水湖や小規模な内湾、湖沼っていうのは、餌の残りや排泄物、餌の沈殿などによる水質問題の影響が外の養殖よりも大きいと思うのですが、そういったことをウミトロンさんの技術でモニタリングすることは可能なんでしょうか?例えば、生簀の下や周囲の環境をモニタリングしたりとかは可能なんでしょうか?

あまり汽水湖や湖沼などの養殖にウミトロンが技術提供を現在していないのですが、生け簀のモニタリングや餌の残りの検知という意味だと、最近「UMITRON REMORA(リモラ)」という、主に海外の大規模養殖事業者向けのサービスを発表しました。大型生け簀やバージ船などを活用する養殖事業者が海外では多いのですが、生け簀の下のカメラとAIを接続して、餌(ペレット)検知をすることができます。

これにより、無駄餌の流出を防いで海の環境を守ることに今後貢献していけるのではと思います。

Q.ペルーのチチカカ湖のサーモントラウトの養殖にウミトロンさんが参入ししている、との記事(2018年12月)を見たのですが、 ペルーとかノルウェーって結構養殖が進んでいるイメージで、でもまだそういう海外でもスマート水産は進んでいないのでしょうか?

はい、ノルウェーでは確かにIT化が進んでいるかもしれないです。 ですが、ペルーでは悪天候での餌やりにより死者が出たこともあったような労働環境で、IT化がまだ進んでいない事業者が多いです。

(うわあ、餌やりは過酷な労働でもあるのか...)そうなんですね。それ関連で言うと、ウミトロンさんはシンガポールに拠点があるみたいで、それってやはり南米とかアジアとかの方がまだ開拓の余地があるからという理由なんでしょうか?

そうですね、最初にシンガポール法人を設立したので、本社がシンガポールで、日本は子会社という立ち位置なんですけれども、 一つは仰る通り、アジアというマーケットが非常に大きいからというところもあって、 これからタイ、ベトナム、インドネシア、中国なんかもめちゃくちゃ養殖していたりしますけど、そんなアジアの国々へのアクセスが良いという理由もあります。 また、日本よりもヨーロッパに近いというのもあり、グローバルをカバーするにもシンガポール、というのもあるかなと思います。

もう一つは、創業メンバーは全員日本人なんですけど、、だから日本で会社を作ってもいいわけじゃないですか。 なんですけど、水産養殖はグローバルで伸びてきているので、グローバルでビジネスをしたいと考えていて、だから日本だけを捉えているわけではないんですね。 最初から日本で会社を設立すると、日本の会社としてみられますが、会社をシンガポールに置くことで、最初からグローバル市場を狙いに行っているということを示せるわけです。

ウミトロンのミッションは「持続可能な水産養殖を地球に実装する」なので。

Q.少し経営的なお話をお伺いしたいのですが、、製品を導入すると初期のランニングコストがかかると思います、回収にはどのくらいの期間がかかるものなんでしょうか。

そうですね、それにはいろんな観点があるので、一概には言えないですね。

UMITRON CELL(スマート給餌機)を導入した場合、餌量の削減によるコストカットのメリットを感じる生産者さんもいれば、魚の成長速度が早くなる、つまり出荷サイズまでが早くなるというメリットを感じる方もいますし、 もし人手が足りないのであれば、人件費が削減できる、余暇ができるというメリットを感じる方もいますので、そういった観点で費用対効果(※)が出てきます。 結構メリットの感じ方には差があります。

※費用対効果:ある施策に費やしたコスト(費用)に対して、どれくらいの効果を得られたのかを意味するもの。

ただ、どれをとっても、導入したコストが高くなるというのは意味がないことだと思うので、導入した分、何かしらの形で早期には回収できる、というような形ですね。

業者さんによって恩恵を受ける点が異なる。従ってコストの回収にかかる期間も異なる。

Q.ウミトロンHPのブログで「メダカに餌をやりたい」という記事(2021年12月)を拝見しました。これに出てくるミニ遠隔給餌機は私たちでも製作可能なんでしょうか?

あの記事見ました?(笑)

どうなんですかね?個人の自由研究みたいな感じなんですけど(笑)

まあでも、できるんじゃないですかね?多少プログラミングが必要になるかもしれないですけど。

やはりエンジニアの方にとっては朝飯前というか、、どのくらいで作ったんでしょうか?

どのくらいなんだろ?

(メダカのミニ遠隔給餌機を作ったのが)UMITRON CELL(スマート給餌機)を作ったエンジニアなんで、割と短期間で作ったんじゃないですかね。 売っているものを使って、プログラミングさえできればコードはGithub上で公開されているので作れると思いますよ。

ただ、もしプログラミングも初めてで何も知識がない方が自作される場合は、最初は0から勉強する必要があるのでかなり苦労はされるかと思います。

ご興味あります?

かなりあります(笑)自宅に遠隔給餌機があるっていうそれだけで響きがカッコイイじゃないですか(笑)忙しい人とかにとっては、うけそうだなと思います。

このミニ遠隔給餌機、少し試してみようと思っています(笑)また状況を更新しようと思うので、お楽しみに!!

第1編はここで終わり!

インタビュー後半は次の記事で!近日公開予定です。

お楽しみに!

最後までお読みいただきありがとうございました。

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