水産養殖

【遠隔で給餌!?】養殖の最先端を行くウミトロンさんに取材してみた【後編】

こんにちは。

先日、海洋大3年生の3人で、テクノロジーで水産養殖に挑む会社@ウミトロンさんにオンライン取材をしました。

前回の記事(前編)に引き続き、【後編】となります。最後までお楽しみください!

行ってみよー!

Q.網生簀(いけす)以外での養殖形態、例えば、ウナギのハウス養鰻やアワビの養殖などがあって... これらだと観察や計測が魚よりも難しいと思うのですが、そういうものをウミトロンさんの技術で解決することは可能なのでしょうか。 または、将来的には考えていらっしゃるのでしょうか?

それは「魚類だけでなく、貝類に対してもソリューションを提供するというのを考えているか」ということでしょうか?

はい、そうですね。

(ウミトロンの)ミッションとしては、「持続可能な水産養殖」を実現したいので必ずしも魚類に限定していないんですね。 貝類の養殖も今後発展していくだろうし、海苔や昆布などの海藻類の養殖も盛んに行われてたりするので、 その課題も解決していくことも将来的にやっていくつもりです。

ただ、そこ(魚類以外)に着手していない理由は、技術的に難しいというよりは優先順位の問題です。 魚類が養殖の中で大部分を占めていて、タンパク質の供給に直結しているので、まずは魚類にフォーカスしていて、だからまだ貝類や海藻類に積極的にアプローチしていないという感じです。

海苔食べてお腹いっぱいにはならないじゃないですか(笑)

確かに(笑)

これから人口が増えて、タンパク質をみんなが摂取するようになると、(陸上の)お肉だけで世界の人口に対して供給するのは不可能です。 だから魚でタンパク質を供給するのは必須となるので、最初にフォーカスすべきは魚類なんです。魚類の成長産業化は今進んできていますし。 だから、まずは魚類にフォーカスして、その課題を解決する技術提供をしています

Q. 養殖場ってどうしても密度が高くて、魚の病気も蔓延しやすく、「蔓延したらそこの生簀の魚全部ダメになってしまう」ということもあって、 経済的打撃もあると思います。魚の体長を認識するUMITRON LENSのような技術を利用して、魚の病気をいち早く認識することは可能なのでしょうか。 または、そういう技術をゆくゆくは考えていますか?

「UMITRON LENS」は水中の魚のサイズを自動で測定する機械です。

そうですね、今その課題に対して公開できる情報はないのですが、「魚病」というのももちろん大きな課題として認識しています。 生産者の方もそこは大きな課題意識を持っているところです。 魚病を早めに検知する、または魚病を防ぐような養殖をするという面に関して、将来的に技術提供をする可能性は大いにあるかなと思います。

なるほど。あと、UMITRON LENSはAIを利用した機械だと思うのですが、機械学習を実際に使えるようになるまでどれくらいの期間があったのか、それまでにどんな苦労があったのか教えていただけますか?

はい、仰る通り、(実際に利用できるようになるまで)結構時間がかかっています。 そもそも魚のサイズがわかるデータが世の中にないんです。生簀の中で泳いでいる魚が何センチでどれくらいの大きさですというデータがないんですね。これまで誰も取っていないので。 データがないので、データをとるというところから自分たちで始めました。

私も入社した当時、ぶりの出荷作業を手伝いながら、ぶりを一本ずつ、定規とはかりの上に乗せて写真を撮るという作業を何百回と繰り返したことがあります。

魚の教師データ(※)を集めるのが地道で大変だというのがありますね。

また、魚はどんどん大きくなっていきますよね。真鯛だったら、2年くらいかけて10gの稚魚から2kgくらいの出荷サイズになります。 この出荷サイクル2年間分の魚のデータを揃えることがプロダクト開発としては難しいですね。

※教師データ:機械学習で学習に用いるデータセットのうち、「例題」と対応する「正解」という形式に整理されたデータ。 多分、「この真鯛のサイズ(画像)」(例題)→「30cm」(正解)というようなデータ。

(真鯛の場合、)生まれてから死ぬまで2年間、全部データを取る必要があるので、まあ3~4年くらいは必要になるということですか。

もちろん1つの生簀でずっとデータを取っているわけではないので、複数の事業者さんのいろんな生育サイズの生け簀でデータを収集させていただいています。

真鯛からすると何年分かになりますが、我々としては2年間ずっと(魚が成長するのを)待っているというわけにはいかないですからね ただ、データを集めるというのにはそれ相応の時間がかかって、ここが難しいところですね。

...なかなか地道なところから始めているんですよ(笑)

(想像するよりも地道だった...!)

Q.今、「うみとさちプロジェクト」だったり、先日のくら寿司さんへのAI真鯛の提供だったり、色々とPRされているかなと思うのですが、 今以上に消費者にスマート養殖やウミトロンに関心を持ってもらうには、どのようなことを行っていきたいと考えていますでしょうか?

「うみとさち」はウミトロンの技術で育ったサステナブルな魚を販売するプロジェクトのこと。

なるほど、いい質問ですね。

ウミトロンの技術を活用して育てた魚を「うみとさち」としてブランド化しているのですが、、 ウミトロンの技術で育てた魚を販売して、でもただ単に自社の名前をつけてブランド化して売りたい、っていうわけではなくて、 サステナビリティに貢献している魚であるということを(消費者に)伝えたいと思っています。

とはいえ、消費者の方は「サステナブルな魚」って言ったときにピンとこないわけですね。 海の資源が減っているという事実も知らない方もいれば、「養殖ってそもそも天然よりイメージ悪い」「養殖の魚って、結局魚食べて育っていて、それって本当にサステナブル何だっけ」 とか思う人もいるんですね。 「サステナビリティ」という捉え方はすごく難しいと思いますし、それをうまく消費者の方に伝えて、 尚且つ、その課題を自分ゴトをして捉えてもらうことが購買につながると思っています。水産で成功事例がない中で、そこら辺をいかにうまくやっていけるかがすごく難しいと、、 プロジェクトをやっていて実感しています。 何が(消費者が買いたいと思う)フックになるのかっていうのは、我々もちょうど探っている段階で...

例えば、くら寿司さんとかだとAI真鯛を全国のくら寿司で販売してもらって、それがテレビ的に面白くて全国放送で沢山取り上げていただいたりしたんですけど、

(知っていたら、食べに行きたかった...!)

こういう風に技術フックだと消費者の方が面白いなと思って買いたくなるのか、それかもっと伝え方を変えて、 ちゃんとサステナビリティとは何かということを具体的に伝えることが大事なのか、やはり美味しさが大事なのか、 そもそも魚の消費量が年々下がってきているので、どうやっておいしく食べてもらうかという所から入ったらいいのか、など切り口が沢山あって、そこは今模索している段階です。

でも、やりたいこととしては、多くの消費者の方に魚のサステナビリティを伝えていきたいと思っていますし、そういう魚が選ばれる世の中にしたいということです。

日本っていうのは、島国で豊かな海に囲まれていて、天然で美味しい魚もたくさん獲れて、 しかも安価に食べれる国ですけれども、世界見渡すとそんなに恵まれている国はない。 という中で、やはり日本人としてサステナブルな魚を購買するというのをやっていかないと、どんどん魚がいなくなっちゃって食べれなくなっちゃう世界が来るので、 消費者の価値を変えて、魚の購買行動の価値変容をするというところにはチャレンジしていかないとなとは思っています。

お金を払ってちゃんとサステナブルな魚を買う世界を作っていきたいですし、それを技術で後押しして、 色んな生産者さんがサステナブルな方法で魚を作ることができるようになって、それをちゃんと消費者が選んで、お金を払って買う というサイクルの循環を目指したいと思っています。今本当にそこは試行錯誤中っていう感じですね。

...どう思います?どうしたら消費者が買うと思います?

講義で急に当てられた雰囲気...笑

そうですねえ...(笑)以前、僕、東急ストアで「うみとさち」の鯛を購入させていただいたのですけど、

えーありがとうございます!

デザイン性豊かな売り場!買いたくなります

実際にサステナブルな鯛を買いました

いえいえ。...やっぱり、普段行くスーパーに置いてあるというのがいいかなと思います。イトーヨーカドーとかだと、ASC認証(※)でしたりMEL認証(※)がついた魚がどんどん置かれていってるなと感じていて、そういった意識が少しずつ変わるように供給が変われば、より消費者の方に分かっていただけるのかなと思います。

※ASC認証、MEL認証:養殖水産物に対するエコラベル

そうですね。それも一つありますよね。 やはり販路を多様化しないと消費者は買いに行けないので、それも大きいところですし、我々もスーパーさんに置いてもらう努力っていうのもしないといけないですね。

Q.すごく単純なんですけど、ウミトロンの由来ってなんでしょうか?

海(うみ)のエレクトロンで、「ウミトロン」ですね。 よく、「トロが好きなんですか」とか言われるんですけど、違いますね(笑)

Q.最後に海洋大生に向けてメッセージをください!

どうしようかな。海洋大の全員が(このサイトを)見ているんですよね。

...見てほしいです(笑)

皆さん見てくださいね~(笑)もちろん海洋大生以外も!

そうですね。

(海洋大は)全く海に関心がない人が入る大学ではないと思っていて、何かしらそのような分野に興味がある人が集まっていると思っているんですけど、 例えば海が好きであるとか、生き物が好きであるとか、そういった方がきっと集まってきていますよね。

我々は海で魚を育てるということをやっていますが、結局は皆さんの学ばれている学問とのつながりも何かしらあるかとは思います。 食品メーカーの消費側に行かれる方、生産とか研究とか環境とかいろんな分野の方面に行かれる方がいますが、 生物が生きて、消費されて、プラス海の環境を守るというのは海洋大のどの学問においてもおそらく密接に関わっているのではと思います

なので、ぜひ皆さんで広く海のサステナビリティに貢献していけるような形で一緒に歩んでいけたらいいなと思います。

我々としてもスタートアップとして、海のサステナビリティをリードしたい気持ちがあって頑張っていますけど、私たちウミトロンの力だけだと、 とてもじゃないですけれども世界の海のサステナビリティというのは非常に大きなテーマなので、それは絶対に実現できない事だと思うんですね。 だから皆さんで学ばれて、社会人になった後、何かしらの形で色んな業界で色んなステークホルダー(※)になって、 皆で一緒になって海全体、地球全体を守っていっていきたいなと思っています。

※ステークホルダー:企業における利害関係者

貴重なお話ありがとうございます!

興味深い話をありがとうございました。養殖に関しては初心者で、授業でさわりをやったくらいで、そのような技術的なことばかりだと、開発している方の熱意や考え方が見えてこなかったのですが、何を考えて技術が応用されていっているのかというのが間近に感じられてすごく面白かったです!いつか将来関わることになった時は、精一杯やりたいなという気持ちになりました。ありがとうございます!

最後に

ウミトロンさん、改めてお話する機会を設けていただき、ありがとうございました!

最後までお読みいただきありがとうございました。では!

前編はコチラからね!

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